プログラムの目的
本プロジェクトの目的は、グローバル時代を迎えつつある東アジアにおいて、教育職員や教育行政に関わる職員の資質能力の向上を図るため、東アジア及びASEAN諸国の有力大学と連携し、東アジアにおけるリーダー養成のモデルとなる国際的教育指導者共同学位プログラムの開発を行うことにあります。
グローバル化の本質は資本と人の国境を越えた流動化であり、その現れ方は国や地域によって異なります。東アジア諸国では、グローバル化の進行する今日、多文化共生、経済的・文化的格差などの諸問題が共通する喫緊の教育課題として浮かび上がっています。こうした新たな時代的課題に対して、国際的な視野を持ちつつ、知識偏重の東アジア型教育を改革し、新たな教育の創造を志向する人材育成が求められています。
近年、東アジア諸国では、知識偏重の教育を改め、態度やスキルなどを含め、全面的な発達を促す教育への転換が模索されてきました。しかし皮肉なことに、少なくとも日本では知識偏重の教育は改善されているように思われません。また、留学生数減少に見られるように国内志向が強まりつつあります。
グローバル化に対応するための一つの選択肢として、私たちはグローバルな変化を皮膚感覚で知り、またローカルな教育事情にも通暁した教育専門職(教育行政関係者、学校教員など)の育成を考えました。このため、東アジアの有力大学と連携し、国際的教育指導者共同学位プログラムの開発研究に着手しました。
本プロジェクトは、国際的なネットワークの強化・拠点形成に基づき、共同学位プログラム開発のための基礎的研究と共同学位プログラム開発の実践的研究の2つの部門から構成されています。
共同学位プログラム開発のための基礎的研究は、国内外の先行事例の調査を通して、共同学位プログラムの実態を把握することを目的とします。制度、目的、・教育内容、スタッフや施設等の体制、学生募集と入学者選抜、奨学金を初めとするさまざまな生活支援、そしてプログラム全体のアセスメントなどが、主な研究対象となります。共同学位プログラムの多くは、試行錯誤を繰り返しながら改善を重ねています。成功事例はもとより、失敗事例からも多くの事柄を学びたいと考えています。
共同学位プログラム開発のための実践的研究は、東北大学大学院教育学研究科を中心として、実際に共同学位プログラム開発を行うものです。東北大学大学院教育学研究科では、これまで東アジアの有力大学とさまざまな学術交流を行ってきました。また現在も積極的に国際的学術交流を推進しています。こうしたネットワークを活用し、育成すべき人材像、教育課程・教育内容、教材開発、教育アセスメントなど、パートナー大学と共同開発を行います。現段階では、修士課程に焦点を絞り、開発研究を進めています。
また、これらの研究成果を基盤として、パイロット的に共同学位プログラムを実施します。
本プログラムの効果として期待できる事柄は以下の通りです。国際的教育指導者共同学位の研究拠点を形成し、共同学位プログラムを共同開発することにより、質の保証された国際水準の教育を提供し、これによって世界のニーズに応じる資質能力を備えた優れた教育指導者を育成することができます。そして将来的には、この共同学位プログラムの成果は、アジア諸国と共有化され、国境を越えた人的交流を通じ、協働で教育課題の解決に立ち向かうネットワークが形成されることを期待しています。