谷口和也担当の授業科目(講義題目)
下記は、本年度(2012年度)のものです。
〔学部〕
- 教育課程総論(日本の教育課程)
対象: 2年生以上 実施: 2学期・火曜日・2コマ
内容:日本の学校がどのような考え方によって教育課程が編成されてきたのか。明治の初めから現在の学習指導要領までの特質を理解します。
①「近代日本の教育課程」では、啓蒙主義としてはじまった近代日本の教育が、やがて「従来の儒教思想」と「近代的な資本主義」を両立させるために、独自の教育政策を展開していったこと。このような教育観の変化が、女性の社会的地位の変化にも現れてきていること、など、めまぐるしく模索を行ってきた明治時代の教育政策について考えて行きます。
②「教育学理論の発展と教育課程改革の試み」は、主に大正時代から昭和初期までの教育学や実践の転回を中心に、世界中からの様々な新教育の導入、郷土教育や生活綴り方教育などで、実験的な教育実践が花開いた時代について解説していきます。
③「戦後日本における教育課程の変遷」では、戦後の学習指導要領が、どのように出発し、変容して行ったかについて考えて行きます。「問題解決学習」「詰め込み授業」「落ちこぼれ」「ゆとりの教育(マスコミ的な「ゆとり教育」ではない)」などの、よく耳にするフレーズが生まれた時期でもあります。
④「多文化共生と教育課程」では、1998年版、2008年版の現在の学習指導要領の基盤のをなす、教育政策上の大きな転換を、世界的な改革の動向から見て理解を促します。
本授業は、教員免許状の修得のために必要な科目となっています。 - カリキュラム論講義Ⅰ(現代日本の教育課題とカリキュラム)
対象: 2年生以上 実施: 2学期・火曜日・4コマ
内容:価値の多様化や国際化など、現代日本の抱える問題に対して、生き残りをかけて教育政策はどのような視点を持って改革されてきたか。本授業は、特にカリキュラムと価値観形成の視点から現代の教育を考えていきます。
①「カリキュラムの基本的課題」では、表面上は同じように見えるカリキュラムでも、実は、背後に様々な考え方が存在することを、歴史教育と価値観形成を軸としてお話します。例えば、「小学校で習う歴史教育」という考えは変な言い方で、小学校6年生の社会科は「社会学」の理論で構成されています。また、中学校に「地理」の時間はなく、社会科の地理的分野は「地理」とは異なる考え方で、三年間の社会科の一部として作られています。このように、カリキュラムを理論面までさかのぼると、そこに多様な教育の考え方が存在することが分かります。
②「カリキュラム原理と価値の問題」では、価値の多様性と教育についての基本的な視点について考えて生きます。「子どもなりの考えを大切に」という言葉は美しく響きますが、本当の意味で子どもの価値観形成の主体性を確保するためにはどのようにすればいいのでしょう?まして、多様な価値が尊重されるべき現代社会で、どのように子どもが自分なりの見方・考え方を確保するのでしょう。ここでは、このような、教育における価値観の問題を観挙げる基本的な視点を学びます。
③「社会科における評価の問題」では、2002年度以降の絶対評価への転換の背景にある「スタンダード政策」について学んだ上で、カリキュラム観や評価観が大きく転換したこと。多様な正解が存在する中で、評価はどのようにすれば良いのか、社会科や生活科を事例に考えて行きます。
④「多文化共生社会とカリキュラム」では、このような価値の多元化と国際化の中、カリキュラムは将来どのようになればいいのかを考えていきます。「アジア共通歴史カリキュラムは開発可能か」「多文化共生社会の新しい歴史教育素案」「カリキュラムと現代社会課題」と、いささか刺激的なタイトルを付けて、将来のカリキュラムについて考えていきます。 - カリキュラム論講義Ⅱ(カリキュラム研究の国際化)
対象: 3年生以上 実施: 2学期・12月の連続講義
内容:学部の集中講義に位置づけていますが、大学院生を含む、今後、国際学会で発表したい人、外国の雑誌の論文を発表したい人、すべてに受講していただきたい授業です。担当は、前全国学会の会長で研究の国際化のプロジェクトを率いていらっしゃった、広島大学の池野範男先生による講義となります。
教育学研究の分野は、これまで、比較的国内向けに研究がなされてきました。しかし、研究の国際化が叫ばれている現在、特に、若手研究者を中心として、海外での活動が評価対象となってきています。しかしながら、国内向けに訓練されてきた研究発表の方法やデータ処理の方法は、必ずしも海外で通用するとは限りません。ことは、語学の問題だけではないのです。
本授業では、全国学会が数年にわたって蓄積してきたノウハウと、現在も活発に海外での教育学の研究発表をされている池野先生のご経験をもとに、①国際的に通用する教育学研究の課題は何か。②世界的にはどのような研究テーマや方法論が主流となっているのか。③国際的な研究活動を行うにあたって、学会への参加や論文の執筆・投稿は具体的にどのように行ったらよいのか、などの、非常に具体的でためになるお話を頂く予定です。 - カリキュラム論演習Ⅰ(参加型授業の教育方法を考える)
対象: 3年生以上 実施: 1学期・火曜日・3コマ
内容:この授業では、1980年代以降を中心に数多く提唱されてきた「参加型授業」について、実際に体験していただきながら、その長所や短所、功罪について考えていきます。あわせて、参加型の授業方法の実際が見につくという目的も持っています。
「子どもが楽しそうに動く」ためか、無条件で参加型の授業を取り入れる人も多い現状ですが、このような授業だからこそできること、このような授業だからこそ分からなくなることがあります。それを踏まえて、最大限の効果を上げ、現代的な視点で取り入れることが大切です。
①「参加型授業を考える」では、自分の受けてきた参加型授業を振り返りつつ、なぜ、現在、参加型の授業が求められるようになったのか、その背景について考えます。ここの演習では「バズ討論」「ダイヤモンドランキング」などの手法が使われます。
②「調べ学習の功罪」では、子どもに図書室で、ネットで調べさせたことを発表させる授業がどのような問題点をもたらすのかを、ディベートの授業の実際を体験しながら考えていきます。いきなりのディベートで議論が深まらないのは当たり前ですが、受講生が調べてきたことをもとにディベートを行ってもやはり議論は深まりません。その一方、「論点表」を利用し、あらかじめ用意された10点の資料を基に立論させ、ディベートを行わせると、資料の読み取り、活用、ディベートのないよう共に驚くほど深まります。これに基づき、なぜ、調べ学習を行うことが問題となるのか、逆説的に考えてみます。ここでは、「ディベート」が使われます。
③「シミュレーション学習で分かるもの、分からないもの」では、1980年代からさかんに行われてきた「シミュレーションゲーム」「ロールプレイ」の学習が、多くの社会認識を阻害してきたことを考えてみます。例えば、有名な「貿易ゲーム」では、子どもは楽しく動き「途上国の大変さは共感できる」が「世界の貿易のしくみについてはよく分からない」「途上国に生まれなくて本当によかった」などの子どもたちの感想を残してしまいます。その一方で、生活科などで、これらを取り入れることで、はじめて「分かるもの」もあります。ここでは、「シミュレーションゲーム」「ロールプレイ」の功罪を考えていきます。もちろん、「シミュレーションゲーム」「ロールプレイ」の学習方法を通して授業がなされます。
④「子どもたちの議論をどのように引き出すか」では、現在、重要視されている「表現力」について考えて生きます。「表現力」とは、みんなの前でプレゼンを行う能力ではなく、「第三者に学習で得た成果を用いて論理立てて説明する能力」です。しかし、単に「話し合ってみなさい」「意見を述べなさい」では、子どもの考えを引き出せません。ここでは、多文化共生社会に必要な「表現力」を育てる具体的な方策を体験していきます。〔大学院〕
- カリキュラム論特論Ⅱ(カリキュラム研究方法)
対象: 大学院生 実施: 1学期・金曜日・3コマ
内容:(工事中)
- カリキュラム論研究演習Ⅰ(シチズンシップ教育の実施状況)
対象: 大学院生 実施: 2学期・金曜日・3コマ
内容:(工事中)
- カリキュラム論研究演習Ⅲ(博士論作成と研究発表)
対象: 大学院生 実施: 1学期・(月に1回・第二土曜日)
内容:基本的には他のゼミと合同で、大学院生の研究発表を行う場です。学会発表前の発表や、博士号の修得を目指す方たちの発表もありますので、大学院生はぜひ参加し、自分の研究を磨いてください。
- 教授学習研究演習Ⅰ(新しい学校づくりの事例研究))
対象: 大学院生 実施: (6コマ目・社会人学生対応)
内容:(工事中)
- カリキュラム論特論Ⅱ(カリキュラム研究方法)
〔学内非常勤〕(東北大学大学院・環境科学研究科)
- 環境科学演習
対象: 博士課程前期1年生 実施: 1学期・月曜日・3~4コマ
内容:「通勤時の排ガスを半減させる方法は?」→「二人で自動車に乗ればよい」。
環境問題の解決のためには、技術的なブレークスルーのみでなく、社会経済的視点から技術を捉えることも必要です。本授業は、1学期前半の「環境科学概論」でのオムニバス形式の講義を基盤に、環境問題を実際的に捉え、ディベート形式で現在の研究上の問題点を把握することを目的としています。谷口は、技術者の卵である環境科学研究科の学生さんに、「社会経済的視点からの環境技術の位置づけ」と「実際のアクティビティにおけるファシリテーション」を行っています。
写真の様子は、「貿易ゲーム」(改)環境教育バージョンの様子です。一般的に、理系の学生さんは、技術的なブレークスルーによって環境問題を解決しようと考えます。これは良いことですが、一方で、現実社会を見ると開発された環境技術が世界中に転移・拡散するには、さまざまな政治的経済的な障壁があります。まず、「貿易ゲーム」(改)によって、技術と資源が偏在することを体験します。「たかが、紙を切るだけのゲーム」なのに、みなさん熱中して「道具(=技術)を貸せない」「資源(=紙)があるだけ作ってしまう」という状況に陥り、「環境技術移転」も「資源の持続的利用」も吹っ飛んでしまうことが分かります。
さらに、次の時間は、「100人の村ゲーム」(改)環境教育バージョンによって、環境問題の地域的特性、富や教育水準の偏在も体験します。世界諸地域に見立てた輪の中に入り、二酸化炭素排出に見立てたボンボンを振ることで、同じような二酸化炭素排出をおこなっていても、北米とアジアではとらえ方が違うこと、ハイブリッドカーなどを開発しても、その環境技術の恩恵にあずかるのは、正解の5分の一の階層でしかないことなどを実感します。
その後、科学技術以外の、経済的要因、政治的決定や制度設計、慣習の転換や教育など、文理融合型のディスカッションを発展させ、環境問題を解決する科学者の卵が育っていくという授業が展開されます。
〔学外非常勤〕(宮城学院女子大学)
- 教育史
対象: 2年生以上 実施: 2学期・金曜日・3コマ
内容:(工事中)